1.5℃という数字の意味
1.5℃目標。世界の平均気温の上昇を産業革命以前に比べて2℃より低く保ち、1.5℃に抑える努力をするという目標。
これらの目標は、COP21(国連気候変動枠組条約締約国連会議)で採択された「パリ協定」の発効により設定された。しかし1.5℃という数字にイメージが持てないひとも少なくないだろう。ここでは具体的に1.5という数字が持つ意味をクリーンにしていこう。
現状の世界の平均気温
EUの気象情報機関、コペルニクス気候変動サービスは今年の4月、衝撃的な発表をした。(以下、日本語訳による引用)
世界的に、2023年は記録上最も暖かい年となり、1991~2020年の平均より0.60℃高く、産業革命前の平均より約1.48℃高かった(C3S ERA5再解析データセットに基づく)。産業革命前の平均より1.5℃以上高かった日は50%近くあり、2℃以上高かった日は初めて2日あった。
約1.48℃。そう、つまりこれは目標まであと0.02℃しかないということだ。
ちなみに1.5℃目標を実現するうえでは世界の温室効果ガスの排出を2030年までに半減させ、二酸化炭素の排出量、実質ゼロ(カーボンニュートラル)を2050年までに達成する必要があるといわれている。
では実際これらの目標は達成可能なのだろうか。実は現在の気候変動枠組条約に加盟している国は196カ国。しかしこれらほとんどの国が現在実施中の施策では将来の排出量を防ぐ程度の効果しかないといわれている。当初の各国の実施内容では2100年には世界の気温上昇の見通しは2.9℃にもなるという見立てもあった。これらのデータがどのくらい正確であるかはわからないが、破壊的な気候変動を招くことは間違いない。すべての国がもう一度、政策を見直し改善することが求められるだろう。しかし、言うは易く行うは難し。経済的成長も視野に入れながら実行するにはまだまだ改善すべき問題点が多く残されているだろう。

なぜ1.5℃?
そもそもなぜ1.5℃という目標値なのだろうか。
単純にこれは実現できる可能性があり地球温暖化による影響を最小限に抑えることができるという目標である。
しかしここにはもうひとつ記憶にとどめておいた方がいいことがある。
それは、ホットハウスアース理論だ。
三畳紀前期(今から約2億5190万年前~2億130万年前の地質年代)の地球は、大気中の二酸化炭素濃度 が高く、ホットハウスアース と呼ばれる極端に温暖で乾燥した気候であったと言われている。簡単に言えばこのホットハウスアース理論はその時代に近い現象が起こりうるということだ。
もう察しがつくかもしれないが、その基準点が1.5℃〜2.0℃なのだ。
ではなぜ、1.5℃〜2.0℃平均気温が上昇しただけでホットハウスアース理論が起きるのだろうか。それはそこを基準にドミノ倒しのように温暖化を加速させる現象が次々と起きると想定されているからだ。
例えば、北極の氷が溶けることで太陽光を反射させて熱を逃す効果が弱まり北極圏周辺の海面温度が上昇。それにより永久凍土が融解し、メタン(二酸化炭素以上の温室効果を持つ)が放出される。
こんな具合に一定のスピードではなく、温暖化が急速に加速すると言われている。そうなった時、自然の脅威に人間は太刀打ちできないだろう。
my fear is that we press upstoppable buttons in the earth system.
私が恐れていることは、私達がもう元に戻れなくなる地球システムのボタンを押してしまうことです。
Johan Rockstrom
まとめ
1.5℃と聞くと大した数字ではないように思えるが、そこがいわゆる「引き金」になるかもしれない。だからこそ2.0℃以上にしてはいけないし、できるだけ手前で止める必要がある。
現状からして、1.5℃目標はかなり厳しい。しかし、諦めずに向き合い続け、最小限の上昇値にしなければならない。そのためには世界が手を取り合い共に協力していくことがマストになってくる。果たしてそんなことが今の世界情勢の中でできるのだろうか。
タイムリミットはすぐそこまで来ている…

