エコ・フライトの真意
新型コロナウイルスの蔓延から4年。いわゆる「コロナ禍明け」で需要が高まる旅行産業。2024年にインバウンドは約2,800,000人、アウトバウンドは約1,200,000人と推定されている。円安の影響もあり、特にインバウンド観光客数が激増し国内の旅行産業は好調の波に乗っている。そんな中、忘れてはいけないのが航空業界だ。
目的地まで早く到達できる航空機は、移動にかかる負担を軽減させ時間の効率化を図るうえで重要視されているため国内外問わず利用される。では飛行機による環境への負担はどのくらいなのだろうか。取り組みも含めてみていこう。

Flight shameとは恥?
Flight shame(飛び恥)という言葉をご存じだろうか。これは航空業界が与える気候変動への影響の大きさから、飛行機に乗ることは環境破壊に加担することを意味するとして搭乗を避ける行動のことだ。つまり飛行機に乗ることを恥とし、鉄道など他の移動手段をすすめる意味の新語のことで、スウェーデンで最初に「flygskam(フライトは恥)」という言葉が生まれ、英語や他の言語に翻訳されて世界に広がった。
代表的な例としては気候変動への抗議活動で座り込みをしたグレタ・トゥーンベリさんがニューヨークまで高速ヨットを利用したことだろう。彼女はほかにも鉄道を使ってヨーロッパを移動する。日本に住んでいるとわからないかもしれないが、飛行機に乗ることは恥(shame)とする考え方はこのように一定数の間で少しずつ定着しているようだ。 では実際、どのくらい飛行機は環境への負荷を与えているのだろうか。国土交通省のHPによると輸送量(人キロ:輸送した人数に輸送した距離を乗じたもの)当たりの二酸化炭素の排出量は自家用車が128(g-co2/人キロ)、バスが71(g-co2/人キロ)、鉄道が20(g-co2/人キロ)で肝心の航空機は101(g-co2/人キロ)。そう、実は航空機による移動よりも自家用車の方が環境に負担をかけている。これは何を示しているかというと飛行機に乗ることを恥だと考えている人は当たり前のように自家用車も乗らないということだ。公共交通機関や自転車などのみで日ごろから生活しているということだ。あなたは同じことができるだろうか。居住地によって交通手段の利便性は異なり一概にいうことはできないが。私生活で徹底的にこれらの行動を意識できる人は少ないだろう。
さらに日本は島国のため海外に行く際は海をまたぐ。船でいけないこともないが移動にどれだけの時間がかかるかは容易に想像ができるだろう。忙しい現代人には現実的でない。では改めて、「飛行機に乗ることは恥なのだろうか」。
環境問題に意識を向けて生活をすることは大切だ。しかしそこに重きを置きすぎて生活の質が損なわれてはいけないと思う。flight shameのような考え方は一般市民を置き去りにしかねない。過剰な環境思考によって市民意識の二極化が進んでいるような気がする。その間に生じる溝が大きくなればなるほど気候変動対策への意識改革は混乱に陥るだろう。

これは私の意見でしかないが「飛行機に乗ることも、自家用車に乗ることも恥ではない」。ただそれらを利用することでどれだけの負担をかけているかを知り何ができるかを考えることが大切なのではないだろうか。
SAFの可能性
そうはいっても航空業界は極力GHG排出を減らす努力が必要だ。もちろん航空産業界はかなりの努力をしている。様々な取り組みの中で今回、特にピックアップしたいのがSAFだ。SAFとは持続可能な航空燃料(Sustainable Aviation Fuel)のことで、廃食油、微細藻類、木くず、サトウキビ、古紙などを原料として製造されているためCO2削減効果が見込める。なぜこれらの原料を使うとCO2削減の効果になるのかわからない方もいるかもしれないので簡単に説明しよう。化石燃料が多くの炭素を含んでいるのはご存じだろう。それと同様に上で述べたSAFの原料として使われている資源も燃焼することで二酸化炭素を排出する。しかしそれらは地上で自生していた時に大気中の二酸化炭素を吸収したため事実上、燃焼の際にそれを排出しているだけだ。それに比べ化石燃料は地中に埋まっている。それを掘り起こして燃焼することで大気中の二酸化炭素の総量が増えてしまう。これらの理由から化石燃料よりもSAFの方が環境に配慮していると言える。よってカーボンニュートラルを達成するうえでSAFは重要な役割を果たすと言われているわけだ。SAFはCO2の排出量が削減できるだけでなく国産原料で作ることができ、従来の機体やインフラが使え、安定したエネルギー供給になるといったいくつかのメリットもある。 ここまでSAFの有望な可能性を述べてきたが、経済産業省資源エネルギー庁のホームページには以下のような記述がある。
2022年時点における世界のSAF供給量は、約30万キロリットル。これは、世界のジェット燃料供給量の0.1%程度にしかすぎません。
引用元:経済産業省エネルギー庁
主な原因としてSAFのもととなる原料の世界的な需要の増加による価格高騰があげられる。先ほど挙げたメリットの中に国産原料で作ることができると述べたが、あくまでも化石燃料に比べ地産自給の潜在能力を秘めているということだ。まだまだ課題は多くイノベーションの発達とともに企業努力が求められるだろう。それと同時に交通機関のユーザーである我々一人一人が今後どうしていくかを考えていく必要がありそうだ。



“エコ・フライトの真意” に対して1件のコメントがあります。