淘汰されゆくモビリティ
スーパーカブが、消える
排気量50㏄以下のスーパーカブが2025年5月をめどに生産を終了することになった。
スーパーカブ・シリーズは自動車工業大手の本田技研工業株式会社(通称: ホンダ)の世界的ロングセラー製品で、生産台数はオートバイとして世界1位である。2017年10月には累計生産台数が1億台を突破しており、現在も記録を更新し続けている。
私の自宅アパートでも、4人ほどの住人がスーパーカブを所有している。国内でも未だにその影響力は健在といったところか(私のアパートだけかもしれないが)。
そんな中でなぜスーパーカブは生産を終了することになったのだろうか。これは一企業の都合によるものではないのである。
というのも、環境保護の観点から二輪車の排ガス規制が強化され、この規制の下に定められた新たな基準を満たす50㏄原付を生産することが困難となったのである。つまり、50㏄原付の生産が直接禁止されたというより、新たな規制によって生産終了に追い込まれたという形である。
この排ガス規制の適用は2025年11月に始まる予定で、それに先立って生産を終了する運びとなったというわけだ。
ここでいくつか疑問が浮かんでくる。
現在使用している原付は公道を走れなくなってしまうのだろうか。そうなると原付免許は実質無効になってしまうのだろうか。はたまた、噂では現行の原付免許で原付二種(50㏄超125㏄未満)に乗れるようになると言うが本当なのか。原付二種がOKということは二段階右折もする必要がなくなるのか。制限速度も60km/h にアップ……?
これらの疑問を一つずつ解消していこう。
どうなる?50㏄ 乗れるの?125㏄
まず排ガス規制が適用されることによって50㏄の原付が公道を走れなくなるということはない。排ガス規制によって制限されるのはあくまで生産段階の話であり、その基準を満たしていない従来の原付が非合法化するわけではない。メルカリで3万円で買った私の原付も90年代製のものなので新基準には沿っていないだろうが、走っても何ら問題にはならない。
ちなみに原付免許が必要な電動バイクの生産が終了する心配はない。言うまでもないことかもしれないが、ガソリンを動力源としない電動バイクは環境にあまり負荷をかけないからである。よって原付免許が無効になることもない。
では現行の原付免許で現行の原付二種を運転できるようになるということだろうか。
結論から述べると、この認識は誤りである。しかし現行の原付免許で運転できる車両の枠組みが広がるというのは間違いではない。
警察庁の『二輪車車両区分見直しに関する有識者検討会 報告書概要』によると、「総排気量125cc以下の二輪車の『最高出力』を現行原付と同等レベルの4kW以下に制御した二輪車(新基準原付)」の「運転特性は、現行の原付とほぼ同等」と評価されている。
ここで重要なのは「最高出力が4kW以下」という点だ。
従来の125㏄クラスのバイクは最高出力が4kWを優に超える。50㏄を圧倒するこの馬力によって少々大きな車体でも比較的高い速度を実現できるのである。
一方で、新基準原付というのは馬力を50㏄程度に制限した125㏄以下のバイクを指す。現行の原付免許で乗れるのはこの新基準原付のみとなる。
そもそも二段階右折などという厄介な原付特有のルールはその低馬力が理由である。制限速度30km/h の原付は周囲の車体と速度差があるため、二段階右折という特殊ルールによって危険を回避するよう義務付けられているのである。
つまり新基準原付に乗る場合も制限速度30km/h が課せられ、二段階右折も義務付けられる。
よって現行の125㏄クラスのバイクに乗るには結局、小型限定普通二輪免許以上の免許が必要になるのである。

これを聞いてがっかりした人もいるかもしれないが、ここにあえて積極的な意味を付与するならば、原付の生産終了はモビリティ産業における「新時代の到来」と言えるということだ。今後排ガス規制はますます厳しくなり、一定の基準を満たさないモビリティは市場から次々と姿を消していくだろう。いずれバイクや自動車をはじめとしたあらゆるモビリティがガソリン以外のエネルギーによって稼働することになっていくのだ。
そうなれば自動車やバイクは静かに走れるようになるわけで、燃費の悪いスーパーカーをブンブンいわせて走る富裕層や警察車両と鬼ごっこする暴走族の姿が、「そんなことあったなぁ」などと懐かしまれるような時代がすぐそこまで来ているような、そのような気がしてならないのだ。


