森林環境税の存在意義
森林環境税とは
「森林環境税」というものをご存じだろうか。
「2024(令和6)年度から国内に住所のある個人に対して課税される国税」であり、既に課税が始まっている。
課税の対象者は上記に述べた通り国内に住所を有する者となるが、ここに住民税非課税対象者は含まれない。森林環境税は住民税の均等割※に上乗せされる形で課される税金であり、日本国民の中所得者層・富裕層ならばその所得額の多寡に関わらず支払わなければならない税金なのだ。
※住民税には所得割と均等割の2種類がある。所得割というのはその所得額に応じて課税額が定まるというもの、均等割というのは課税対象者が一律で定額の負担を負うというものである。
やはり、気になるのはその徴収額だろう。
徴収額は、一人当たり年額1000円である。
これを高いと思うか安いと思うかは人それぞれであるが、実は2023年度以前も住民税を支払っていた人は支払う額は変わらない。というのも、東日本大震災を受けて国が創設した「復興特別税」と入れ替わりになるからだ。
ここまで課税の対象者や徴収額などについて述べてきたが、次項では「森林環境税の使途」と題して、肝心な税金の使い道について詳しく見ていこう。

森林環境税の使途
このごろ、裏金やら何やらが世間を賑わしているおかげで、納めた税金が本当のところ何に使われているのだろうか、と気が気でない人も少なくないだろう。
まず何を目的にこの税が設けられたのか、総務省は以下のように明記している。
パリ協定の枠組みの下におけるわが国の温室効果ガス排出削減目標の達成や災害防止を図るため、森林整備等に必要な地方財源を安定的に確保する観点から、森林環境税及び森林環境譲与税が創設されました。
引用:総務省
つまりこの税金を使って森林を整備することによって環境保全ないし土砂崩れなどの災害を防ぐことを目的としているようだ。
それより、新たに「森林環境譲与税」という見慣れないワードが出現しているが、これは森林環境税を財源として国が自治体に支払うお金のことだ。支払われる金額はその自治体の森林面積や人口などによって決まる。よって (人口)×1000円 がそのままその自治体のお金になるわけではないということだ。
その使い道に関しては各地方公共団体に委ねられており、取り組みはそれぞれの自治体によって異なる。ちなみに森林環境税の徴収は2024年度からだが、森林環境譲与税はそれに先行して2019年度から自治体に配られている。よって自治体による活動も既に始まっているのである。
そこであえて森林がまるでなさそうなまちを選んでみよう。森林がないまちはいったい何に税金を使っているのか……。
東京都江戸川区を例に取る。江戸川区はこれまで区内の小中学校を中心に、国産材を含む木材を利用した施設の「木質化」を進めている。要は税金を木材の利用に充てているということである。
こうした木材の利用と森林環境の保全は一見、相反するようにも思えるが、実は森林の伐採は健全な森林環境を保つうえで必要不可欠なのだ。森林の成長に応じて樹木に一部を伐採する間引きなどは森林の持つ間面的機能を増進させる効果がある。
本項では森林環境税および森林環境譲与税の目的と使い道についてあっさりと紹介した。あなたもお住いの自治体が森林環境譲与税を何に使っているのか、この機会に調べてみてはいかがだろうか。
環境対策は新たな段階へ――みんなが責任者
一人1000円でいったい何が変わるというのか。そんな声も聞こえてきそうだ。
たしかにこの税金によって日本の環境が劇的に改善されるということはないだろう。変わるといっても微々たる差なのだと思う。しかしこの税金の意義は単に環境保全にあるのみではないと私は考えている。
これまで日本はさまざまな環境政策を打ち出してきたが、それらの政策とこの森林環境税には決定的な違いがある。
それは、対策費を国民から(国や自治体からではなく)直接徴収しているという点であろう。
もちろん、国が対策費を拠出する場合においてもその財源は国民から徴収した税金であったわけだが、それらの税金は「環境対策に使う」という明確な用途が示された上で徴収された税金ではなかったはずだ。
総じて私が言いたいことというのは、国や自治体、企業だけでなく、国民という末端の単位でさえも環境対策への協力が義務化されてきているということである。「みんなが環境問題に責任を持とう」という、今までそういう風潮はありつつも実体をもって国民に迫ってくることはなかったが、今年度よりほとんど無差別に「負担」として国民ひとりひとりにのしかかるようになった、それが森林環境税なのだろう。
何かと「先進国」なり「途上国」なり、ある一定の価値基準をもって優劣のラベルを付けること自体あまりよくないかもしれないが、欧米諸国と比べれば日本が「環境対策後進国」であることは言うまでもないことだ。それは行政の問題というよりも、国民の意識の問題であるようにも思う。この記事が日本の人々のそうした意識を変える一助になればと思う。



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