地球温暖化「懐疑論」をめぐって

“Drill baby drill(掘って、掘って、掘りまくれ)”

 アメリカの第47代大統領に就任したドナルド・トランプ氏は就任演説でエネルギー価格の高騰でアメリカは非常事態だと宣言した。結果、大量の石油とガスを「掘って、掘って、掘りまくる」という政策を実行している。特に顕著なのはアラスカ州で掘られているLNG(液化天然ガス)の掘削だ。トランプ大統領はバイデン政権の際は掘削が禁止されていたのにもかかわらずアラスカ州の保護区での開発を全面的に推進する大統領令までも出したのだ。

 エネルギー価格が高騰している現状から化石燃料に依存する政策を重視する行為はカーボンニュートラルが謳われる今日、時代に逆行していると思われる。それもそのはず、トランプ大統領になってからアメリカはパリ協定を離脱し、炭素税を廃止、CPP廃止など脱炭素社会への逆行を促進している。彼の言う「いかさま環境問題」はなぜここまでまかり通るのだろうか。今回はアメリカを例にとり、温暖化懐疑論がいかにして主張を強めたのかにフォーカスを当ててみよう。

アメリカの保守派と石油業界

 1988年、NASAの気候科学者ジェームズ・ハンセンはアメリカ議会で、地球温暖化がすでに進行しており、その主な原因が人間による温室効果ガスの排出であると証言した。彼の発言は注目を集め、当時のブッシュ政権も一時的にCO₂削減に前向きな姿勢を見せた。しかし、それと並行して、温暖化に対して懐疑的な意見も社会の中に広がり始めていた。

 1990年代以降、アメリカではいくつかの保守系シンクタンクが、地球温暖化に関する別の視点を提示するようになる。たとえば、ジョージ・C・マーシャル研究所やアメリカン・エンタープライズ研究所、ハートランド研究所などは、「気候変動は自然の変動によるものであり、必ずしも人間活動によるものとは言い切れない」とする報告や意見書を発表していった。これらの機関は、温暖化に関する科学的知見にはまだ不確実性が多く、急進的な政策決定には慎重さが必要だという立場をとっていた。

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 一方、これらのシンクタンクの活動には、エクソンモービルをはじめとする化石燃料業界からの資金提供があったことが、後に複数の報道や文書公開により明らかになる。石油や石炭などの産業にとっては、気候変動対策によって規制や税負担が増える可能性があり、その影響を懸念する立場から、温暖化に関する議論の中立性や多様性を訴える活動を支援したとされている。

 2001年に就任したジョージ・W・ブッシュ政権は、京都議定書への参加を見送った。政権内にはエネルギー業界と関係の深い人物もおり、温暖化政策において経済的影響への配慮が強調された。また、自動車の排出規制や電力部門への制限にも慎重な姿勢を取った。これに対しては、気候科学者や環境団体からの批判があったが、同時に経済界や保守派市民からの支持も根強かった。

2000年代後半になると、メディアにおいても気候変動をめぐる意見の分裂が顕著になる。ある番組では科学的コンセンサスが強調され、別の番組では反対意見や不確実性が紹介される。世論も二分され、地球温暖化を重大な脅威と捉える人々と、懐疑的な立場を取る人々との間で認識のギャップが広がっていった。

 そして、2017年、ドナルド・トランプ大統領(第一期)はアメリカをパリ協定から脱退させた。彼は経済成長とエネルギー産業の振興を優先する方針を掲げ、環境保護庁(EPA)の予算削減や、温室効果ガス規制の見直しなどを進めた。トランプ氏の政策は、気候変動に対して積極的に対処すべきとする立場からは懸念された一方で、過剰な環境規制が経済の足かせになると考える一部の産業界や保守派からは支持された。

その後、気候科学の研究は進展を続け、多くの国際的機関は地球温暖化の原因として人為的要因の影響が大きいとする見解を示している。しかし、アメリカ国内においては、温暖化の科学的解釈とその対策をめぐる意見の違いが依然として存在し続けている。

科学的不確実性の真意

 気候変動に関する政府間パネルであるIPCCが第6次報告書で「人間の影響が大気、海洋及び陸域を温暖化させてきたことには疑う余地がない」と示しているのを初めて見たとき、私自身も「なんとまあ、回りくどい言いかたをするのか」と感じたのを鮮明に覚えている。しかし、地球規模で起きている気候変動に関して不確実性はいまだ残っているものの科学的知見はすでにあるのは確かだ。そのうえでいまだ地球温暖化に懐疑的な意見を持つことは悪いことではないと私は思う。しかしながら、それを主張するためには両者の意見を根底からさかのぼって見つめ直し、自分と意見が異なる立場の重箱の隅をつつくのならば自分の意見の重箱の隅はつつかれないようにしておくことが必要最低条件だろう。

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 温暖化に対する政策や意見は、単に科学の問題だけでなく、経済、価値観、政治的信念と深く結びついている。この複雑な構図の中で、どの立場を取るかは、科学的根拠と同時に、それぞれが重視する社会的優先順位によっても左右される。温暖化懐疑論の広がりは、その構造の一部を映し出すものであり、今後の議論においても、中立性と多面的視点が求められているのだ。

 私は地球温暖化は人為的要因が関与していると思っているが科学的な不確実性が伴っているのは承知している。温暖化に関係なく自国の一時的な経済回復のために有限な資源を掘り起こすことは長期的な考え方ができない視野の狭い人間の行う脳筋行為だと感じてしまうが…。

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