クラウド社会が抱える環境問題

 ——あなたが今スマホで送った1枚の写真。その裏で数リットルの水と大量の電気が消費されているかもしれない——。

 Netflix、YouTube、Instagram…我々の生活の周りには多くのソーシャルネットワークサービスがある。それどころか仕事、勉強、コミュニケーションまでもがインターネットなしでは想像できないほどオンラインの生活にのめりこんでいる現状がある。

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 そのオンライン生活を影で支えているのがクラウドサービスだ。

 クラウドとは、インターネット経由でデータの保存や処理を行えるサービスや仕組みのこと。パソコンやスマホに保存する代わりに、GoogleドライブやiCloud、Dropboxのようなクラウドサービスを使えば、世界中どこにいてもネットさえあれば自分のデータにアクセスできる。紙媒体のデータを使っていた以前の生活に比べ、はるかに便利になった。

 しかし近年、そのクラウド社会における環境問題が問題視されてきているのだ。その問題の根深さに今回は目を向けてみよう。

クラウドサービスが生む「見えない負荷」

 先にクラウドサービスが環境に負荷を与える項目を挙げておこう。

・データセンターの電力消費

・冷却による水資源の消費

・二酸化炭素の排出

 この三つが主な環境問題とされている。ではひとつずつ見ていこう。

 世界に点在するデータセンターが我々の情報を保存しているなかで、常に稼働し続けるサーバー、ストレージ、ネットワーク機器などが膨大な電力を消費している。データセンターは各企業が保有しているケースが多く、アメリカ・アイオワ州のGoogleのデータセンターでは約10億キロワットアワーの電力が消費されているという話もある。これは年間の一般家庭25万世帯分の電力使用量に匹敵する。データセンター内では、数十万台に及ぶサーバーが常時稼働しており、機械学習やクラウドストレージ、YouTube動画配信、検索エンジンの処理などを支えている。サーバー機器は無停止での運用が基本であり、ほんの数秒の停止でも多くのユーザーに影響が出るため、非常用電源や複数の電力系統を備えたインフラで支えられている。Googleは再生可能エネルギーへの投資も進めているが、ピーク時や非常時には火力発電による電力も使われており、電力消費そのものの多さは依然として大きな課題だ。

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 次に水資源の大量消費だ。5分の検索で1杯の紅茶同等の熱エネルギーが必要といわれるクラウドサービス。サーバーは稼働中に大量の熱を出すため、冷却が必要だ。とはいえ、冷却するだけであれば水は循環するのではないかと思う人もいるかもしれない。答えはノーだ。その理由に冷却方法があげられる。冷却には蒸発冷却(ウォータークーリング)という方法が用いられているのだ。蒸発冷却とは冷却水を表面積の大きい格子や管群に流下させ、周囲の空気流と接触させることにより水の一部を蒸発させ、その時の蒸発潜熱の吸熱により水を冷却するという方法のことだ。汗が蒸発して体温を下げる原理と同じだ。この方式は冷却効率が高くコスト面からみても大変優れているのだ。しかしこれが結果として大量の水消費につながっている。MetaやGoogleのデータセンターが地元住民から干ばつの懸念がされるということで抗議されているような事案も出てきている。「Facebookよりも農業に水を回すべき」という声にどう対応すべきか、これも向き合っていかなければならない問題だろう。

 そして最後が二酸化炭素の大量排出だ。これは一つ目と重複する部分もあるが、データセンターの電力源が化石燃料由来である場合、膨大な二酸化炭素が排出されることは言うまでもない。アマゾンが展開する「AWS(Amazon Web Services)」は、世界最大のクラウドサービスプラットフォームであり、新興国市場にも積極的に進出している。2020年、AWSは南アフリカのケープタウンにリージョン(地域拠点)を開設したが、この地域は石炭火力発電への依存率が極めて高いことで知られている。南アフリカでは約80%の電力が石炭に由来しており、AWSのデータセンターも例外ではなく、膨大なCO₂排出が懸念されている。国際環境NGO「Greenpeace」のレポート(”Clicking Clean”)では、AWSは全体としての再エネ移行が進んでいないと示されておりこれに対して、GoogleやMicrosoftは再生可能エネルギー100%達成を目指して投資を加速しているが、AWSは商業秘密を理由にエネルギー構成の開示を限定しているため、透明性の欠如が指摘されている※1。

やることは同じ「環境対策」

 これらの問題を解決するためには何が必要だろうか。何せこの問題が顕在化したのはここ数十年の話で、歴史が浅い。経験国が他の発展途上国などに再発防止のための支援ができる話ではないどころか、世界全体で同時に起きている、というより世界共通の問題なのだ。今後もデータは蓄積し続け、一人当たりのデータ使用量は増え続ける。ソーシャルネットワーク上に革新的なサービスがリリースされるたびデータセンターは多くの水とエネルギーを消費し、多くの二酸化炭素を排出する。

 では改善していくためにできることは何だろうか?過去に経験したことのない歴史の浅い、新たな問題と言いつつも、することは今までと同じのように感じる。例えば「必要のない写真やデータは削除する」といったことがあげられる。笑ってしまうほどありきたりだが、クラウド社会の事例においてはわかりやすく一人ひとりの重要性が可視化されているのではないだろうか。

 何が言いたいか。

 あなたの写真のフォルダには必要のないデータはないだろうか。私自身ふと見返してみると100枚はくだらなかった。これを世界中の人々が確認してみると不要なデータの量は想像を絶するだろう。これは「電気をこまめに消す」、「水を流しっぱなしにしない」というありふれたエコアクションよりもよっぽど効果が出るのではないだろうか。つまり、クラウドも電力や水と同様、いやそれ以上に有限な資源を消費して成り立っているという意識づけが今後は重要なのだと思うのだ。今後、データ量はますます増え続けるだろう。その中で、一人ひとりが自分の持つ「データのゴミ」を見直し、削減することは、地球規模での環境負荷を減らす第一歩となる。大げさに聞こえるかもしれないが、気づかぬうちに溜まったファイルを定期的に整理するだけでも、立派なエコアクションなのだ。この新生環境問題には初歩的なエコアクションが必要ではないだろうか。

 「クラウド」と聞くと雲を連想させて、軽く浮遊しているイメージがあるだろう。しかし実際は違う。あなたの思い出の写真も仕事で使うPDFファイルも恋人からのメッセージも、そしてこの記事のデータもすべて雲の上にあるのではない。地上の巨大な機械の中にあるのだ、しかも有限な水資源、エネルギーを大量に消費して…。この事実をまず周知させ、市民の意識づけから始める。環境保全対策は初心に立ち返る時かもしれない。

(参考文献)

※1 Greenpeace Finds Amazon Breaking Commitment to Power Cloud with 100% Renewable Energy – Greenpeace – Greenpeace

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