京葉臨海コンビナートがカーボンニュートラル達成を目指すことの重み
千葉市から富津市までの南北およそ40キロにわたる日本最大のコンビナートである京葉臨海コンビナート。
石油精製所、火力発電所、鉄鋼、化学プラントなどが立ち並んでおり日本を代表する重化学工業の中心地だ。
そんな京葉臨海コンビナートではカーボンニュートラル推進協議会が開催され、大きな注目を浴びている。
日本のカーボンニュートラル達成状況
Sustainable noteの読者であれば2050年までに日本がカーボンニュートラルを達成する目標が制定されているのはご存じかもしれない。しかし、今回はあえてもう少し詳しくカーボンニュートラル達成に向けた方向性を紐解いていこう。
まず直近の2030年の目標は2013年度比で温室効果ガス排出量を46%削減することが目標に挙げられている。その5年後の2035年には60%、40年には73%と進んでいき50年の実質ゼロを達成するのが主な経過目標だ。
日本の現状としては以下のような結果になっている。
2022年度の我が国の温室効果ガス排出・吸収量は、約10億8,500万トン(二酸化炭素(CO2)換算、以下同じ。)で、2021年度比で2.3%(約2,510万トン)の減少、2013年度比では22.9%(約3億2,210万トン)の減少となりました。 引用元:2022年度の我が国の温室効果ガス排出・吸収量について | 報道発表資料 | 環境省
カーボンニュートラルを達成するためには何が必要だろうか。私が推測するに日本は大きく分けて3つの事象に力を入れていくと感じる。
まず一つ目が、「エネルギー政策」だ。再エネを主力電源化し、比率を全体の36~38%に引き上げる方針だ。再エネの電力買い取り制度やグリーン投資促進も掲げ民間の電力会社と共同で進めていこうとする姿勢が見える。
二つ目が「産業構造の転換」だ。GXという言葉を聞いたことはないだろうか。GXとはグリーントランスフォーメーションの略称でクリーンなエネルギーを活用したり、脱炭素社会に向けた取り組みへシフトすることで環境に配慮した産業構造を社会全体の変革につなげようとする考え方だ。政府はGX経済移行債を発行しEVやアンモニア混焼・SAF、水素社会構築やカーボンリサイクル等の事業を支援する方向だろう。
そして三つ目が「ライフサイクル改革」だ。住宅の省エネや使い捨てをやめ、循環型社会への意向を意味するサーキュラーエコノミーの促進を促す。
これら三つを上げても思うのは多方面における取組強化が求められるということだ。業界、地域、規模によって課題の傾向はさまざまである。では京葉臨海コンビナートがカーボンニュートラルを達成することからはどんな社会的意義があるのだろうか?
排出量トップクラスの京葉臨海コンビナート
経済産業省が出している「温室効果ガス排出の現状等」では以下のように示されている。
・我が国のエネルギー起源CO2排出量を部門別に⾒ると、電気・熱配分前排出量では、エネルギー転換部門からの排出が最も多く、全体の約4割を占めている。
・⼀⽅で、電気・熱配分後排出量では、産業部門からの排出が全体の4割弱と最も多く、次いで運輸部門、業務その他部門、家庭部門となっている。
引用元:温室効果ガス排出の現状等
ちなみに電気・熱配分前排出量とは発電及び熱発⽣に伴うエネルギー起源のCO2排出量を、電気及び熱の⽣産者側の排出として、⽣産者側の部門に計上した排出量のことで、電気・熱配分後排出量とは発電及び熱発⽣に伴うエネルギー起源のCO2排出量を、各最終消費部門の電⼒及び熱の消費量に応じて、消費者側の各部門に配分した排出量のことだ。
ここで注目すべきは、配分前後排出量のそれぞれで最も割合が多いエネルギー転換部門と産業部門だ。
京葉臨海コンビナートが該当するのはもちろん産業部門だ。コンビナートがある千葉県は、産業部門の二酸化炭素の排出量が最も多い。原因に京葉臨海コンビナートがあげられるのは言うまでもないだろう。そのため2025年1月、カーボンニュートラルを目指す協議会が開かれ、水素やアンモニアの供給を共同で受ける拠点の整備に向けて検討を始めることが大きな話題を呼んだというわけだ。
何せこれらの取り組みは、京葉臨海コンビナートの国際競争力を維持・強化しつつ、日本をリードするカーボンニュートラルコンビナートへの転換を図るものであり、今後の日本の産業界における脱炭素化のモデルケースとなる可能性も示唆できるのだから。

本質的な問題解決への不透明さ
しかし、もう一度経済産業省が出している「温室効果ガス排出の現状等」を見直してほしい。配分前排出量で最も排出しているのは「エネルギー転換部門」、つまり発電所などのエネルギー供給源だ。京葉臨海コンビナートのような重工業地帯が「カーボンニュートラル達成」を掲げることには、重要な意義がある一方で、看過できない視点もある。
というのも、重工業は膨大な電力を必要とする部門であり、その電力自体が火力発電など化石燃料由来であれば、表面的な「カーボンニュートラル」達成に過ぎないからだ。要は、直接排出をゼロにしても、間接排出が依然として存在する限り、総体としての温室効果ガス削減には直結しない。
つまり本質的には、京葉臨海コンビナート単体の努力だけではなく、電力供給側の脱炭素化(再エネ化)が不可欠だ。配分後排出量で産業部門が最大割合を占める今、電気の「作り方」を変えなければ、私たちの脱炭素社会への道筋は、見せかけだけのものになりかねない。

何も今回の取り組みが無意味だとは微塵も思っていない。今回の大きな動きを境に本質的なエネルギー構造を見直すことが求められていくべきだということだ。今後の気候変動対策は「本質」を見極めながら評価する必要があるのではないだろうか。


