98%を再生可能エネルギーで賄う国、ウルグアイ
先日、講演動画をインターネットで無料公開するTED Talksで興味を引く題名の動画を見つけた。
それが“This country runs on 98 percent renewable electricity”というものだ。つまり「98%を再生可能エネルギーで賄う国」ということだ。環境先進国のエネルギー形態についての動画だと思い、詳細をクリックしてみるとそこには意外な国の元エネルギー長官が出演していた。
前例のないエネルギー転換を
意外な国とは、南アメリカ大陸の南東部に位置するウルグアイ。
そこは2008年にエネルギー危機を経験した過去がある。原因はさまざまであったのは確かだが、主な原因は化石燃料への依存が危機をもたらしたといわれている。皮肉なことに当時、ウルグアイは貧困率が下がっていたためエネルギーの需要が急激に増えていったことで需要とのバランスが取れなくなった。化石燃料に乏しいウルグアイは電力を輸入せざるを得なかったのだ。10億ドルにも及ぶ輸入額は小国であるウルグアイにとっては痛手で、GDPの2%に匹敵する額だったという。それでもエネルギー危機は食い止めきれず停電に見舞われる状況にまで追い込まれたそうだ。
この動画の登壇者であるラモン・メンデス・ガライン氏はその危機感から素粒子物理学者であるのにもかかわらず、専門外のエネルギー問題の勉強を始めついに大統領から国家エネルギー機関の政治責任者になることを依頼されたのだ。
彼は再生可能エネルギーの可能性を確信し、電力開発の公式な移行に向け動き出し始めた。もちろん大改革といえるシフトチェンジは容易なものではなかったようだ。電力システムが円滑に運転される計画を立てるためにソフトウェアの設計に多くの学者たちが何年も費やしたそうだ。
努力の甲斐あってついにウルグアイは2017年の時点で98%を風力、太陽光、バイオマスを基本とした再生可能エネルギーで賄えるようにした。エネルギー自給率が高いのはもちろんのこと余ったエネルギーは隣国であるアルゼンチンやブラジルに送電している。

98%というフレキシブルな数字
人によっては、「なぜ100%ではないの?」と感じたのではないだろうか。このことについても動画内では言及されている。
それは「保険」として火力等の発電方法が有効であるということだ。再生可能エネルギーは自然条件に身をゆだねている。もし異常気象等の問題で電力が不足した場合、サステナブルでないからといって化石燃料を使用した発電方法をかたくなに使わないのはナンセンスだろう。ウルグアイはガスタービン・複合発電とエンジン発電を利用し柔軟性のある化石燃料の発電所を残しているのだ。そうはいっても、エネルギー商品の価格変動からほぼ自立しているのは疑う余地がないだろう。
他国での再現性
再生可能エネルギーへの転換で忘れてはいけないのが費用対効果についてだ。もちろん初期投資はかかったものの今や再生可能エネルギーは最もコストのかからない選択肢だ。そのうえガライン氏はウルグアイでは年間約11億ドルかかっていた費用を6億ドルにまで減らしたことを強調している。5億ドルがGDPの1%なのだからその効果は言うまでもないだろう。
ちなみに公演が行われていた当時のアメリカのGDP1%とは2500億ドルに匹敵するそうだ。もちろんこの結果を出すためには新たな市場モデルの構築がなされているわけだが、それができれば全体の費用を大幅に削減でき、さらには長期的に安定させることができるのだ。さらに巨額の投資を受けたのち国内の労働人口の3%の新たな雇用を創出したという。まさしくこの事例は環境と経済の両立を実現した理想的な政策だったのだ。

「しかし、それはウルグアイのような小国だからできたことなのでは?」動画を閲覧しながら私がそう思った矢先にガライン氏はこう断言した。” Although each country will have to define its own transition process, the vast majority of countries can make a process similar to the Uruguayan one(それぞれの国で以降の過程を決めなければいけないとしても大半の国でウルグアイと同様の過程を作り出すことはできます)” 具体的な根拠が述べられていないため、この発言に関しては多少懐疑的な考えが残るものの、少なくとも応用して使えることはたくさんあると感じた。再エネはその地に適した発電方法で行うことがベストであり国によって地形、気候、人口、経済規模が異なる。温暖化のことを隅にいったんおいてみると産油国は化石燃料を燃やしたほうが国として潤う場合もあるというのも事実だ。しかし世界規模で脱炭素社会を目指していく中で再生可能エネルギーは経済と雇用創出を促進し、地域レベルで実質的な利益を出すことはもはや気候変動対策のための解決策にとどまらないということを示しているのだ。
「持続可能な社会」という言葉がきれいごとを並べた理想郷だというのは時代遅れなのかもしれない。
最後にウルグアイは原子力発電所を20世紀の段階で禁止していることを強調しておきたい。日本で昨年末に出されたエネルギー基本計画では原発を再び使う方針が出されていたが、「原子力発電がなければ電力の安定供給は難しい」という論調は果たして筋が通っているのだろうか…。
参考文献:Ramón Méndez Galain: This country runs on 98 percent renewable electricity | TED Talk


