環境税の理論的基盤、ピグー税

 今回は少し頭を使って読んでほしい。というのも経済学的思考に元づく話を取り上げるためグラフ等を使用して論を展開していく。とはいえ、詳しくはやらず、経済学用語も極力控えて説明するためあまり身構えすぎずに読み進めてほしい。では始めよう。

 誰しもが中高で習う「需要曲線・供給曲線」を覚えているだろうか。縦軸を「価格」として横軸に「数量」をとる。価格が下がるにつれて人々の購買欲が高まり売れる数量が増えることから右肩下がりであらわされる供給曲線。価格が上がるにつれて人々の購買欲が下がり売れる数量が減ることから右肩上がりであらわされる需要曲線。その二つの曲線が交わったところ(p)が適切な資源配分ができる数量と、適正な価格が示される点とされている。かの有名なアダム・スミスはこれを「神の見えざる手」と表し、市場における価格調整の考え方を示した。

 ある財・サービスを売る時、グラフで示したケースでは点P(1個2000円で200個販売)にすることが売り手側、買い手側双方にとって最もよく均衡がとれる。それよりも多く販売すると、売り手は在庫を抱える。逆に少なく販売すると、その財・サービスを買いたかった買い手全員に行き届かなくなる。

 1900年代初頭、産業革命以降大気汚染による健康被害等の問題を見て嘆き、以上の市場メカニズムを見直した。そう、それこそが環境税の基盤を作ったイギリスの経済学者、アーサー・セシル・ピグーだ。

ピグー税とは

 「産業革命以降、工場は0円で自然環境に煙や汚染物質を垂れ流している。被害者に対して何の金銭的負担をしていない。経済活動を行う上で”環境“から何かを採取したり、”環境“になにかを廃棄したり、”環境“を利用したりしても、誰も”環境“に対してお金を払っていない。」これは市場が効率的な資源配分に失敗していることを意味する。これを改善するために、ピグーは「外部不経済(効果・影響を受ける側の経済主体にマイナスの効果・影響が生じること)の内部化」を目指す。つまり、このマイナスの効果を金銭的に解決することを前提に発生源の経済主体にその分の費用を負担させればいいということだ。よりわかりやすく言うと、「市場の外に与えた悪影響は、市場の中で生産しよう」としたのだ。

 以下のグラフで説明しよう。]

 上のグラフを見てわかるように、供給曲線が上にシフトしている。青の線(供給曲線)ある一点を決めそのまま垂直に上がったのち緑の線(供給曲線+環境税)と交わったところまでの移動分は約1500円。そのため数量一個に対して、1500円分上乗せして価格がついているということだ。この1500円が生産段階で悪影響を与えた”環境“への被害総額になるわけだ。そのため効率的な資源配分ができているといわれていた点P(1個2000円で200個販売)は点P❜(1個2500円で150個販売)にシフトする。

 よってこれらのことから、環境税がかかることで効率的な市場では価格が上がり数量が減る。つまり需要が下がり供給量が下がるというわけだ。次に余剰分析に移りたいところだが開設はここまでとする。興味のある人はぜひさらに調べてみるといい。

環境問題における経済学的アプローチ

 ここまで財の生産に伴い生じる外部費用を課税により価格に上乗せし、生産量を経済厚生上最適な水準に調整しようとするピグー税について話してきたが、最後にこの存在意義について述べたい。ピグー税は多くの場面で使われている。例えば地球温暖化のケースでは、二酸化炭素が主要な温暖化ガスであることから、二酸化炭素の排出が課税対象になったりする。

そんなピグー税には3つの大きなポイントがある。一つ目が、汚染発生源である経済主体が外部不経済による影響を減らすインセンティブになることだ。上記したグラフの緑の線をできるだけ下にシフトしようとすることで企業は納税額を減らし、外部環境が受ける悪影響は減る。これを直接規制のように拘束性を持たせるのとは違い、あえて選択の自由を与えることこそが二つ目の大きなポイントだ。政府による規制よりも柔軟性があり、経済全体の効率性を高めることができるというわけだ。結果、技術革新やエネルギー転換が促進されるケースも見受けられるだろう。そして三つ目、税収が環境改善に補填されるということだ。ピグー税によって得られた税収は、単なる財源ではなく、環境改善や社会的公正を実現するための重要なツールとして活用され、環境対策の強化、低所得者層への還元、企業や技術革新への投資、国際的な環境貢献等に適用されることで有用性を高めることができる。環境と経済の両面で持続可能な社会を作るための資金として活用される財源確保の効果がある。

 ピグー税のほかにも、経済学的アプローチによる環境問題対策はたくさんあるがとても合理化された方法であると個人的には感じている。経済学的アプローチによる環境政策は、市場メカニズムを活用し、コスト効率よく環境問題を解決できる点が大きな利点だ。ピグー税のロジックになぞらえた炭素税は導入することで、企業は排出削減か税の支払いを選択し、より費用対効果の高い方法で対応できる。また、排出権取引制度では、削減コストの低い企業がより多く削減し、全体の負担を最小化できる。さらに、インセンティブを活用することで技術革新を促進し、持続可能な成長を実現しやすくなる。「環境保全を建前に金稼ぎが目的か」というには経済学的アプローチによる環境保全政策は合理化を極めているのではないだろうか。

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