水田の機能
あなたは、朝食にご飯を食べる? それともパンを食べる?
おそらくパンを食べる人が多いだろう。しかし、今回は少数派であるご飯に関する話をしていこうと思う。日本では、コメを作る際水田が用いられている。そのため、水田は日本人にとってなじみ深いものだろう。そんな水田についてこんなことを聞いた人もいると思う。
水田からはメタンが大量に発生している
農林水産省のHPによると、温室効果ガス日本のメタン排出量に農業が占める割合は約81%。その50%以上が稲作から排出されている。そう、水田を用いて稲作を行うことで環境に負荷がかかるのだ。これだけを聞くと読者の中には水田による稲作をやめるべきと考える人もいるだろう。本当にそうなのか? 本記事では、水田の多くの機能について触れ、水稲をやめることが最適な環境保護なのかどうかについて考える。
なぜ水田からメタンが…
メタンは、CH₄の化学式で示される化学物質で温室効果ガスの一種である。しかも、驚くべきことに二酸化炭素の約25倍の温室効果を持っている。このような危険をはらんでいるメタンがなぜ水田から発生するのか、その仕組みについてみていこうと思う。
水田は、田んぼを水で満たす湛水と水を抜く中干しの時期がある。田んぼを水で満たすと水田の土壌は酸素が少ない状態(嫌気条件)になる。一方、中干しでは、酸素が多い状態(好気条件)になる。嫌気条件では、二酸化炭素からメタンをつくるメタン生成菌がメタンをつくる。これにより、水田からはメタンが多く発生する。

ここで、1つ大事なことがある。メタン生成菌は嫌気条件で活動的であることだ。好気条件では、酸素が存在するためこの反応は起きない。そこで、次のような解決方法が提案されている。
中干し期間を1週間程度延長しメタン生成菌が活動しやすい嫌気条件の期間を減らすというものだ。農林水産省の資料によると、これにより、温室効果ガスを約3割削減することができる。また、農研機構の資料によると、驚くべきことに品質・食味の向上が認められたのだ。
このことより、水田はまだ十分にメタンの量を削減できる可能性を秘めていることが分かる。しかし、メタンは二酸化炭素の25倍の温室効果もあるのに3割しか削減できないのかと思う人もいるだろう。そこで、次章では水田から得られる利益の部分について触れていこうと思う。
水田の多面的機能
水田は、稲を効率的に生産するためだけのものではなく、他にも多くの機能を内包している。本記事では、その中の2つの機能を挙げようと思う。
まず、雨水の洪水防止機能だ。水田は、名からもわかるように田んぼに水をためて農作している。そのため、降水量が増加した際、雨水を一次的に貯留することにより、排水量を減らすことができる。これにより、下流域への流出量が抑制され、洪水被害を減らすことができる。実際、農林水産省が行った見附市貝喰川流域のシミュレーションでは水田により洪水の被害を減らすことができている(資料)。

次に、地下水涵養機能だ。田んぼに水をためることにより、地下に雨水が流れる。これにより、地下水が増加するのである。この機能の優れている点について知ってもらうために、地下水が豊富な熊本の地下水涵養の現状について触れる。
熊本で最近あったことといえば、少し古いかもしれないが台湾石帯電路製造(TSMC)の子会社の設立だろう。TSMCは半導体の生産の世界最大手であり、生産のために多くの地下水を使用する。そのため、熊本県では地下水の枯渇が心配された。そこで、熊本市は水田湛水推進に関する協定の更新を行った。協定書には、水田湛水への助成などが組み込まれている。以下に助成事業の内容を示す。
■白川中流域の6堰(畑井手堰、上井手堰、下井手堰、迫・玉岡井手堰、津久礼堰、馬場楠堰)から取水される白川の河川水によってかんがいされる水田であること
■大津町・菊陽町・熊本市に所在すること
■湛水が営農の一環であること
■5月から10月までの期間に実施される湛水であること
■連続して0.5ヶ月以上4ヶ月以内の湛水であること
引用:熊本市HP
このような取り組みを行っていたこともあり、熊本は地下水涵養量約6億4千万立方メートルのうち約2億1千万立方メートルを水田からの涵養すなわち、33%近くもの地下水涵養を水田によって行っているのだ。
この章で上げた機能のほかにも文化的な面など多くの機能を持つ。少しは、水田がコメを生産するためだけのものではないことが分かってもらえただろうか。
水田とともに
ここまで、水田が与える環境への負荷、水田がもたらす人間への利益について説明してきた。最後まで読んで、読者は「水田を残していくべき」、「水田を減らしていくべき」どちらの考えを持っただろう。何事も長所と短所を持っている。1つの面のみから物事をとらえるのではなく多くの面から物事をとらえ、考えることを放棄しないでほしい。
Written by TO-I


