PFASの正体
「地下水から PFAS が検出された」
ここ最近、この言葉をよく耳にするだろう。しかし、どれほどの人がPFASのことを知っていて、どれほどの人が正しい対処をすることができているだろうか。おそらく、多くの人ができていないのではないか。そこで、まずはPFASとは何なのか。その疑問を解消していきたい。
PFASは略語であり、正式名称は”Perfluoroalkyl and polyfluoroalkyl substances”である。これでは、英語と化学用語でよくわからない。意訳すると,フッ素がたくさん結合した炭素・水素・酸素などの化合物である。ここで分かることは、PFASはあくまで総称だということだ。読者の中には、PFASという言葉以外にPFOAやPFOS という言葉を聞いたことがある人もいるかもしれない。勘がいい人はお分かりかもしれないが、それらもPFASの中に含まれている。このように定義されるPFAS の使用例として何を思い浮かべるだろうか。おそらく、泡消火剤を思い浮かべた人が多いだろう。しかし、PFAS は、撥水撥油機能によりカーペット、フッ素加工フライパン、シャンプーなど身近なものにも使用されているのだ。

PFASの言葉の意味について分かったところで気になるのは、なぜ今注目されているのかだろう。この言葉を耳にするようになったのはここ2、3年だが、驚くべきことに生産・使用は1950年代から始まっている。実は、PFAS による地下水の汚染も2000年代初頭から明らかになっていた。また、製造の規制は2009年のストックホルム条約などに代表されるように早い段階で始まっていた。それにも関わらず、ここ最近になってようやく注目を浴びているのは、水質目標値が設定されたことが背景にあるだろう。環境省がHPに記載している水質目標値について以下に示す。
(1)水道水令和2年4月1日に、水質管理日標設定項目に位置付けられるとともに、PFOSと PFOAの合算値で、1リットル当たり50ナノグラム
※(50mg/L)とする日標値(暫定)を国が設定。
(2)水環境(公井用水域及で地下水)分和2年5月28日に、要監視項目に位置付けられるとともに、PFOSとPFOAの合算値で、1リットル当たり50ナノグラム
※(50mg/L)とする指針 値(曹定)を国が設定。
※ナノグラム(ng)は10億分の1グラムを示す単位
引用元:環境省
目標値が設定されたことにより、目標値を超える汚染地点が注目されていったのだろう。
ここまで,PFASについてある程度説明してきたが、肝心な人体への影響について説明していなかった。そこで、次項では大きく騒がれているPFAS の悪影響について詳しくみていく。
PFASの悪影響
先述したように、PFAS はフッ素がたくさん結合した炭素・水素・酸素などの化合物である。フッ素と炭素は結合力が強いため、「永遠の化学物質」と呼ばれるPFAS は非常に分解されにくいという性質をもつ。この性質の何が問題なのだろうと思う人もいるだろう。実際、分解されにくいほうが製品として使用しやすい。しかし、分解されにくいということは環境中に長期間残留するということである。これは、地下水から検出されることの説明になる。地表水が地下水に浸透する過程である地下水涵養は、多くの物質が分解される。そのため、地下水はきれいに保たれ、我々は、飲用水として利用することができる。しかし、分解されにくいため地下水にも含まれてしまっているすなわち、分解されにくいという利便性が我々の生活を脅かす原因となっているのだ。
また、PFASはたんぱく質と結合する。たんぱく質と結合することが、直接悪影響になるようには思えないだろう。しかし、分解されにくいことと組み合わさることにより大きな影響をもたらす。その理由について説明していこう。
たんぱく質は、ほとんどの生物が必要とするものであるため、多くの場合体に蓄える。そのたんぱく質にPFAS が結合するのである。しかも、既述の通りPFASは分解されにくいのだ。これにより、体の中にPFASが蓄積していく。恐ろしいことは、これだけではない。 われわれ人間は食物連鎖において頂点に君臨するのである。例えば、魚にPFASが蓄積されていたとする。その魚を我々が食べる。PFASは、たんぱく質と結合しており排出されにくい.そのため、魚を食べれば食べるだけPFASが蓄積してしまうのだ。しかも、我々が食べるその魚もPFAS が蓄積している動物プランクトンを食べている。このようにして、我々の体にPFAS が蓄積してしまうのだ。いわゆる、生物濃縮である。
ここまで、あらかたPFAS の性質を説明してきた。しかし、これで終わりではない。そう、皆が気になるであろうその毒性である。PFASには、発がん性があり主に腎臓がんを引き起こしうる。また,米国オハイオ州での6万9千人の疫学調査では腎臓がんの他に精巣がん、甲状腺疾患、妊娠高血圧症、高コレステロール血症、清瘍性大腸炎との関連性が高いとされた。 PFASの悪影響について少しでも伝わっただろうか。対策をしなければと思った読者もいることだろう.そこで、対処法について触れていく。
PFASへの対処
分解されにくいなら PFAS を水道水から除去するのは難しいと考える読者もいるのではないか。実は、基準値以下の濃度にするくらいであれば簡単である。PFASを分解することは不可能である。しかし、吸着することは可能である。すなわち、水道水に浄水器を設置するのである。
今回は、最近多く取り上げられているPFASについて扱った。あなたが想像しているものと実際のPFASはどれほど異なっていただろうか。PFAS のような環境汚染は、誰にでも影響を及ぼす。すなわち、知っており対処している人と知らずに何もしない人では影響の大きさが異なる。それでも、自分は関係ないと環境問題から目を背けられるだろうか。この記事が、環境問題について考えようと思った人の手助けになればと思う。



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